久しぶりに乗車した観光特急「ゆふいんの森」
水戸岡デザイン全開の4号車で
突然、左から線路が合流してくる。災害により長期運休中の日田彦山線だ。再び列車が走ることはあるのだろうか?夜明という風変わりな名前の駅を通過し、久留米を出てから40分余りノンストップだった列車は日田駅に停車した。
日田駅を出ると、筑後川の上流である三隈川を何度も渡る。トンネルと鉄橋が連続し渓谷美を堪能できる区間だ。黄色いローカル列車とすれ違った天ケ瀬駅では旅館の人たちのお見送りを受け、温泉街を見下ろしながら進むと、まもなく「じおんのたき」を通過しますとの放送がある。「じおん?」と首をかしげていると、アテンダントさんが「慈恩の滝」と大きく手書きした紙を見せながらまわってきた。トンネルを2つ潜り抜けると列車は減速をはじめた。右手を見つめていると、滝が見えてきた。小さな滝かと思ったら、やがて全容が姿を現す。山の上から何段にもなって落ちてくる滝。確かに見ごたえがある。
山間部から、少し開けた区間に差し掛かると、やはり右手には台形状の風変わりな山が見えてきた。伐株(きりかぶ)山といい、巨大なクスノキを切り倒した名残との伝説があるとアナウンスしてくれた。
豊後森駅に停車。ここで初代「ゆふいんの森」車両で編成された「ゆふいんの森4号」とすれ違う。発車すると、右手に大きな扇形庫が見えてきた。荒れ放題になったままだったSL時代の名残の貴重な車庫は、有形文化財に指定されるとともに整備されて公園になっていた。さらに9600形SLが展示されているのも車内から確認できた。一度、下車してじっくり見学しなくてはと思う。
列車は、いよいよラストスパートである。おだやかな高原状の山を上り、サミットとなる水分(みずわけ)トンネルを抜けると、短いトンネルをくぐりながら由布院に向かって下っていく。スピードを落としはじめたときに左手を見ると、ふたこぶの山頂が特徴の由布岳が大きく窓一杯に現れ、由布院駅に滑り込んでいく。
由布院駅は列車から降りた人、さらには折り返し博多へ戻る「ゆふいんの森6号」に乗る人でごった返していた。2時間余りの充実した列車旅の余韻に浸りながら駅舎を出ると、目の前に由布岳が迎えてくれる。雑踏を避けるようにタクシーに乗り込んで今宵の宿へ向かった。
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